大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和59年(う)60号 判決

原判決のかかげる関係証拠(「判示事実全部について」および「判示第二,第三の事実につき」とある各証拠)によると,本件起訴状記載の公訴事実第二に関しては,以下の事実が認められる(その具体的事実経過についてはとくに争いがないと思われる)。すなわち,被告人佐々木は,友人岩村浩から話をもちかけられたことが契機となって,同人および齋藤貫至と共謀のうえ,謝礼を支払って秋田県警察本部交通部運転管理課第一係に勤務していた三浦久夫に依頼するなどして,不正の手段により自己あての中型自動二輪車に限定する旨の条件のない自動二輪車の運転免許をも取得した旨の記載のある自動車運転免許証の交付を受けることができたものであるが(原判示第一事実),これと並行して小・中学校,高等学校を通じての同窓生であり,近所で親しい友人であった被告人渡邉にも右の条件のない自動二輪車の運転免許証を不正に取得させ一緒に大型の自動二輪車を乗り回そうと考え,昭和59年2月上旬ころ,同被告人に対し金を出せば運転免許センターの職員にたのんで不正に条件なしの自動二輪車の運転免許証をもらえる旨もちかけ,同月下旬ころには原判示第一のように不正に取得した自己宛の前示条件のない自動二輪車等の運転免許証を同被告人に示してふたたびその不正取得方を勧めたところ,被告人渡邉も謝礼の現金を提供して自己あての自動車運転免許証を不正に取得しようと決意し,同佐々木にその旨依頼するとともに同被告人の指示により自己の氏名,生年月日,本籍など所要事項をメモして同被告人に渡し,被告人佐々木は自己の免許証不正取得のばあいと同じように同渡邉の依頼とメモした事項を前示岩村に伝え,同人から齋藤貫至に,齋藤からさらに前示三浦久夫に順次同様に伝達し,これにもとづいて三浦は昭和59年3月7日ころ警察庁処理センターに設置された運転者管理業務用電子計算機に被告人渡邉が自動二輪車の運転免許を取得している旨虚偽の事項を送信して同電子計算機の磁気フアイルにその旨登録させたうえ,齋藤貫至に,同月13日に被告人渡邉をして亡滅失を理由とする再交付申請の方法で運転免許証の交付を受けさせるように連絡し,齋藤から岩村,岩村から被告人佐々木,同被告人から被告人渡邉へと前述と逆の順序でその旨伝達されたが,なお被告人佐々木から同渡邉に対しては,さらに再交付申請の当日には写真,印鑑,手数料などが必要であることおよび申請書の記載要領などをも教示したこと,同月13日被告人渡邉は,原判示の秋田県警察運転免許センターで運転管理課管理第一係員に対し,さきに交付を受けた運転免許証を滅失した旨虚偽の事実を申し立てて運転免許証の再交付申請をし,同係員らをして所定の手続を行わせ,よって同日同所において,同係員から原判示の秋田県公安委員会発行の被告人渡邉あての自動二輪車等の運転免許証の交付を受けたこと,を認めることができる(なお,被告人渡邉は,これに対する謝礼として20万円を提供し,そのうち岩村が5万円を,齋藤が10万円を,三浦が5万円を取得したことが窺われる)。

右認定の事実に照らせば,右犯行においてなした被告人佐々木の行為は,同渡邉に自動車運転免許証の不正取得をそそのかしてその決意をさせたに止まるものではなく,被告人渡邉から同佐々木へ,同佐々木から岩村へ,岩村から齋藤へと三浦への免許証の不正取得を依頼するというかたちで順次実行行為についての意思を連絡するとともに,電子計算機による虚偽登録に使用する被告人渡邉の氏名,生年月日等を三浦に伝達してその登録をさせるという「偽りその他不正の手段により」という実行行為そのものの一部をも担当し,また再交付申請の方法により免許証の交付を受けるという実行行為についても,被告人渡邉にそれをなすべき日を連絡したほか,当日持参すべき品物,申請書の記載要領などを指導し,同渡邉はこれにしたがって行動したものにほかならないから,実行行為に必要不可欠な行為を積極的かつ主体的に担当したというべきであって,被告人佐々木は,前示公訴事実第二記載のとおり同渡邉,岩村,齋藤と順次共謀し,共同正犯者として右犯行に及んだと認むべきものである。不正手段により交付を受けた自動車運転免許証の名宛人が被告人渡邉であること(その点は原判決で共同正犯者とされた岩村,齋藤についても同じである)および被告人佐々木が同渡邉が提供した謝礼の一部を受け取っていないこと(それは被告人佐々木が同渡邉への好意から本件犯行に関与したためと思われる)は,右の判断の妨げとなるものではない。原判決が,被告人佐々木の行為は右犯行の実行行為ではなく,また共同意思の下に一体となって互に他人の行為を利用し各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなしたと評価しうるほど積極的,主体的なものではなかったとして,被告人佐々木を共同正犯者と認めず,被告人渡邉への教唆犯と認めたのは右の説示に照らし事実を誤認したものというべく,その誤認は被告人両名に対する判決に影響を及ぼすことが明らかであり,またこれを前提としてなした被告人佐々木に対する法令の適用もまた誤りであって,これまた判決に影響を及ぼすことが明らかというべきである。

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